駐停車中の交通事故:過失割合や損害賠償責任について弁護士が詳しく解説
1.はじめに:駐停車車両が関わる交通事故の現状
近年、路上での違法駐車が交通渋滞や事故の大きな原因となっており、社会的な問題として取り上げられています。
特に、夜間や見通しの悪い場所で、駐車中の車両に後続車や二輪車が追突し、死亡などの重大な結果を招くケースが増加しています。
交通事故は、車が走行している時だけでなく、車を停めている状態でも発生する危険性が常にあることを意識しなければなりません。
本記事では、駐停車中の車両に追突してしまった場合や、駐停車車両が原因で起きた事故の「過失割合」や「損害賠償責任」について、詳しく解説します。
2.法律上の「駐車」と「停車」の違いと禁止場所
道路交通法では、「駐車」と「停車」の違いが明確に定義されています。
駐車とは、客待ち、荷待ち、5分を超える荷物の積み下ろし、故障などによって車が継続的に停止している状態、または運転者が車を離れていてすぐに運転できない状態(放置駐車)を指します。
一方、停車とは、人の乗り降りや5分以内の荷物の積み下ろし、信号待ちや危険回避のための停止など、運転者がすぐに運転できる状態での一時的な停止を指します。
また、交通事故を防ぐため、道路交通法第44条および第45条では「駐停車禁止場所」と「駐車禁止場所」が厳密に定められています。
駐停車禁止場所には、交差点やその端から5メートル以内、横断歩道や自転車横断帯の前後5メートル以内、踏切の前後10メートル以内、坂の頂上付近や急な坂、トンネルなどが含まれます。
駐車禁止場所には、駐車場や車庫の出入口から3メートル以内、道路工事区域の端から5メートル以内、消火栓や消防用防火水槽から5メートル以内などがあります。
車を停める際は、これらの法律を守り、道路の左側端に沿って他の交通の妨害にならないように停める義務(第47条)があります。
3.駐停車中の事故における基本的な過失割合
一般道路で駐停車中の車に後続車が追突した場合、基本的な過失割合は「駐停車中の車:0%、追突した車:100%」となります。
動いていない車に追突した以上、前方不注意などの前方確認義務違反を犯した追突側の責任が極めて重いと判断されるためです。
しかし、駐停車している側に法律上の義務違反(違法駐停車)や危険な停め方があった場合は、駐停車車両にも過失が認められ、過失割合が修正されます。
具体的には、駐停車車両が「駐停車禁止場所」や「駐車禁止場所」に停まっていた場合、駐停車車両の過失が10%程度加算されます。
さらに、道路幅が狭い場所や追い越し車線上への駐停車、道路の左側端に沿っていない停め方など、事故発生の危険を著しく高めている場合は、さらに10〜20%の過失が加算されることがあります。
また、夜間で街灯が少なく前方が見えづらい状況(視界50m以下)において、ハザードランプ(非常点滅表示灯)や尾灯などを点灯せずに無灯火で駐車していた場合も、駐停車側の過失が大きく問われます。
逆に、追突した車に時速30km以上の著しい速度違反や、酒酔い、居眠り運転、スマホの操作(著しい前方不注視)などの重過失があった場合は、追突車側の過失が10〜20%加算されます。
駐停車事故の過失割合は、道路の形状、時間帯、天候、ハザードの有無、追突車の速度など、個別の事情を総合的に考慮して判断されます。
4.駐停車車両が関わる交通事故のパターン
駐停車中の車両が関わる事故には、単なる追突事故以外にも様々なパターンがあり、それぞれで責任の所在が争点となります。
・進行してきた車両が駐停車車両に衝突した事故
見通しの悪い場所や夜間に無灯火で駐車していた車両に衝突するケースです。
駐停車車両の違法性(停めていた場所やハザードの有無)と、追突側の前方不注意の度合いで過失割合が判断されます。
・ドアの開閉時の衝突事故
駐停車中の車のドアを突然開けたため、後方から進行してきた車や自転車、バイクが衝突する事故です。
道路交通法第71条では、安全を確認せずにドアを開けてはならないと定められているため、通常はドアを開けた駐停車車両側の過失が非常に大きくなります。
・駐停車車両を避けたために発生した事故
路上に違法駐車されている車を避けるために対向車線にはみ出し、対向車と正面衝突したり、バイクが転倒したりする事故です。
この場合、駐車車両がなければ事故は起きなかったと判断されれば、駐車車両の持ち主にも過失や損害賠償責任が認められることがあります。
・駐車車両が見通しを悪くしていたために発生した事故
違法駐車されている車の陰から歩行者や自転車が飛び出してきて衝突する事故です。
駐車車両が視界を遮ったことが事故の要因(因果関係)と認められれば、駐車車両の運転者にも過失割合(例えば10〜30%程度)が認定される判例が存在します。
5.駐停車車両の運転者が負う「損害賠償責任」
駐停車車両が原因で事故が起きた場合、その運転者や所有者は「運行供用者責任(自動車損害賠償保障法第3条)」と「不法行為責任(民法第709条)」を問われる可能性があります。
最大の争点となるのは、「ただ車を停めていただけの状態が、自動車の『運行』にあたるのか(運行起因性)」という点です。
一般的に、ただ駐車している状態は運行とはみなされませんが、「走行との時間的・場所的な近接性」や「駐停車の目的」などを考慮し、一連の走行行為と一体であると評価された場合は「運行」にあたると判断されます。
例えば、荷下ろしのために一時的に道路にはみ出して停めていた場合や、夜間に無灯火で放置して対向車線にはみ出す原因を作った場合などは、運行供用者責任が認められ、被害者に対して損害賠償を支払う義務が生じます。
6.トラブルを防ぐための正しい対応と弁護士の重要性
駐停車車両との事故は、動いている車同士の事故とは異なり、「停まっていたのに過失を問われるのか」「避けた自分が悪いのか」など、当事者間で認識のズレや感情的な対立が起きやすい特徴があります。
過失割合が1割変わるだけで、受け取れる(または支払う)損害賠償金が数十万〜数百万円も変動することがあります。
事故に遭った、あるいは起こしてしまった場合は、必ず警察に通報して実況見分を行い、ドライブレコーダーの映像や現場の写真を証拠として残すことが重要です。
そして、保険会社から提示された過失割合に納得がいかない場合や、駐車車両の責任を正当に問いたい場合は、交通事故問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に依頼することで、過去の判例や事故現場の状況、法律上の義務違反の有無を詳細に分析し、適正な過失割合と損害賠償額を獲得するための交渉を任せることができます。
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