外国人が交通事故の加害者であるときの対処法 弁護士が徹底解説
1.はじめに:増え続ける「外国人との交通事故」への不安
近年、訪日観光客や日本で生活・就労する外国人の増加に伴い、外国人が関与する交通事故(特にレンタカー事故など)が急増しています。
もし交通事故の加害者が外国人であった場合、「言葉が通じない」「日本の交通ルールや保険制度を理解しているのか」「賠償金を払わずに本国へ帰国してしまうのではないか」と、被害者は日本人同士の事故とは比較にならないほどの大きな不安とストレスを抱えることになります。
実際に、無保険状態で事故を起こしたり、事故後に音信不通になったりするケースも存在し、「どうせ相手は外国人だから」と最初から諦めて泣き寝入りしてしまう被害者も後を絶ちません。
しかし、結論から申し上げますと、相手が外国人であっても泣き寝入りする必要は一切ありません。
日本国内で起きた事故である以上、日本の法律と救済制度が適用され、適切な手順を踏めば必ず補償を受ける道は残されています。
本記事では、外国人が加害者となった交通事故において、被害者が取るべき初動対応から、賠償金を回収するための具体的な方法、そしてトラブルを回避するための弁護士の活用法までを徹底的に解説します。
2.外国人相手でも「日本の法律」が適用される
大前提として、日本国内で発生した交通事故については、「法の適用に関する通則法」第17条に基づき、原則として加害者・被害者の国籍に関わらず「日本の法律(日本法)」が適用されます。
したがって、損害賠償の基準、過失割合の考え方、自賠責保険や任意保険の仕組みなど、すべて日本人同士の事故と全く同じルールで処理されます。
また、民事訴訟法に基づき、日本の裁判所で訴訟を起こすことも可能です。
相手が外国人だからといって、特別な法律が適用されたり、損害賠償請求の権利が制限されたりすることは一切ありませんのでご安心ください。
3.事故直後に被害者が取るべき「5つの初動対応」
外国人との事故では、後から連絡が取れなくなるリスク(帰国リスクなど)が非常に高いため、事故現場での「証拠確保」と「情報収集」が命綱となります。
① 警察への通報(絶対に必須)
言葉が通じないからといって、当事者同士でその場で解決しようとしたり、相手に逃げられたりしないよう、必ずその場で110番通報してください。警察が作成する「交通事故証明書」がなければ、後日いかなる保険も使えなくなります。
② 加害者の身元情報の徹底的な確認
警察が到着する前、あるいは実況見分の際に、以下の情報を必ず確認し、スマートフォンで写真を撮らせてもらってください。
・在留カード、パスポート、運転免許証(日本のものか国際免許か)
・氏名、日本での滞在先(住所やホテル名)、電話番号
・勤務先や学校名(連絡先を含む)
③ 車両情報と保険加入状況の確認
相手が乗っている車のナンバープレートを撮影します。
また、車検証や自賠責保険の証明書、任意保険の証券を確認してください。レンタカーの場合は、ダッシュボードや車検証入れにレンタカー会社の連絡先や保険情報が記載されています。
④ 現場の状況の記録(写真・動画・ドラレコ)
言葉による状況説明が食い違うことを防ぐため、お互いの車の停止位置、破損箇所、周囲の標識や信号などを多角的に撮影しておきましょう。
⑤ 自分の保険会社への連絡
事故後速やかに、ご自身が加入している自動車保険の会社に連絡し、事故の状況を報告してください。
4.賠償金を請求する「4つのルート」
加害者の状況に応じて、賠償金の請求先(ルート)は以下の4つに分かれます。
ルート①:加害者の任意保険会社またはレンタカー会社に請求する
加害者が日本の任意保険に加入している場合、あるいはレンタカーを利用している場合は、その保険会社(レンタカー会社が加入する保険)が窓口となります。
この場合は、通常の日本人との事故と同様に、保険会社を相手に治療費や慰謝料、修理代などの示談交渉を進めることができるため、最も安心なケースです。
ルート②:雇用主に「使用者責任」を問う
加害者が仕事中(社用車の運転中など)に事故を起こした場合、加害者を雇用している会社(雇用主)に対して「使用者責任(民法715条)」を追及し、会社から賠償を受けることができます。
ルート③:自賠責保険への「被害者請求」
加害者が任意保険に未加入でも、車検を通している車であれば「自賠責保険」には加入しています。
被害者自身が相手の自賠責保険会社に直接書類を提出して「被害者請求」を行うことで、ケガの治療費や慰謝料など(傷害枠で最大120万円まで)の補償を受け取ることができます。(※物損は対象外です)
ルート④:加害者本人へ直接請求する(最も困難なケース)
上記のいずれの保険も使えない場合、加害者本人に直接請求するしかありません。
しかし、加害者が観光客などで帰国してしまった場合、海外にいる相手に訴状を送り、財産を差し押さえるのは費用や手間の面から現実的ではありません。
5.相手が無保険・逃亡・帰国してしまった場合の「最終防衛線」
加害者本人からの回収が絶望的な場合でも、被害者を救済するための強力な制度が用意されています。
① 自分の保険(人身傷害保険・無保険車傷害保険・車両保険)を使う
相手から賠償されない場合、ご自身が加入している自動車保険をフル活用します。
「人身傷害保険」を使えば、相手の国籍や過失割合に関係なく、自分のケガの治療費や慰謝料が支払われます。車の修理には「車両保険」が使えます。
これらは、相手が逃亡したり帰国したりした場合に被害者を守る最強の盾となります。
② 「政府保障事業」を活用する
相手が自賠責保険すら入っていない完全な無保険車であったり、ひき逃げで相手が特定できなかったりする場合、国が加害者に代わって最低限の補償(自賠責と同水準)を行ってくれる「政府保障事業」という制度があります。
全国の損害保険会社の窓口から申請が可能です。
6.外国人との交通事故で「絶対にやってはいけないNG行動」
・その場での「示談」や「口約束」
言葉が通じない中、身振り手振りで「お金を払う」と言われても、絶対にその場で示談してはいけません。後日連絡が取れなくなるのがオチです。
・警察を呼ばずに別れる
少しの擦り傷だから、と警察を呼ばないと、後で痛みが出ても一切の補償を受けられなくなります。
・自己判断で治療をやめる
「相手が外国人だからどうせ払ってもらえないだろう」と諦めて通院をやめると、後遺症が残っても慰謝料や治療費が請求できなくなります。まずはご自身の健康保険を使ってでも治療を継続してください。
7.泣き寝入りを防ぐ最大の鍵:弁護士に依頼するメリット
外国人相手の交通事故は、言語の壁、文化の違い、保険制度の複雑さ、逃亡リスクなどが絡み合い、被害者が個人で立ち向かうには限界があります。
このような困難な状況こそ、交通事故に強い弁護士の出番です。
・複雑な保険請求や制度の活用を代行
相手の自賠責保険の調査、被害者請求、政府保障事業の申請、自分の保険の活用など、専門知識が必要な手続きをすべて弁護士が代行し、最も有利なルートで確実にお金を回収します。
・言葉の壁や交渉のストレスからの解放
相手や相手の保険会社とのやり取りはすべて弁護士が窓口となるため、被害者は面倒な交渉から解放され、治療に専念できます。
・慰謝料の増額(弁護士基準の適用)
保険会社が提示する低額な慰謝料ではなく、過去の裁判例に基づいた「弁護士基準」で請求を行うため、最終的に受け取れる賠償額が大幅に(場合によっては2〜3倍以上に)増額する可能性が高まります。
・「弁護士費用特約」を使えば実質無料
ご自身の自動車保険や火災保険に「弁護士費用特約」が付帯していれば、弁護士の相談料や着手金、報酬金(通常300万円まで)を保険会社が負担してくれます。この特約を使えば、費用倒れの心配なくプロのサポートを受けることができます。
8.まとめ:外国人との事故でも諦める必要はありません
相手が外国人であっても、日本の法律と保険制度、そして弁護士のサポートを活用すれば、必ず適切な補償を受けることができます。
「言葉が通じない」「相手が帰国してしまったらどうしよう」と不安に駆られ、一人で悩んだり泣き寝入りを選んだりする前に、まずは交通事故の専門家である弁護士に助けを求めてください。
事故直後の早い段階で相談することが、選択肢を広げ、あなたの正当な権利を守るための最大の防衛策となります。
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