インプラントの治療費を請求できるか?弁護士が徹底解説
交通事故でインプラント治療費は請求できるのか?
交通事故が原因で歯を失ったり、大きく破損したりした場合、インプラント治療を希望する方は少なくありません。
結論から申し上げると、加害者側に対してインプラント治療費の全額を請求すること自体は可能です。
しかし、請求したからといって、必ずしも全額がすんなりと支払われる(回収できる)わけではありません。
インプラントは健康保険が適用されない自由診療であり、治療費が1本あたり数十万円と高額になるため、保険会社から支払いを拒否されたり、減額を提示されたりすることが多いからです。
適正な賠償を受けるためには、インプラント治療の必要性や費用の妥当性を、客観的な証拠を用いてしっかりと証明する必要があります。
インプラント費用が認められるための3つの条件
相手方の保険会社にインプラント費用を認めさせるためには、実務上、以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。
第一に「事故との因果関係」であり、歯の損傷が間違いなくその交通事故によって生じたものであることを、事故直後の診療録や画像などで証明しなければなりません。
第二に「治療の必要性」であり、失った歯の機能や審美性を回復するために、インプラント治療が医学的に必要であることを示す必要があります。
第三に「費用の相当性」であり、請求する治療費が、一般的なインプラント治療の水準から見て不当に高額すぎないことが求められます。
もし、事故前からすでに虫歯や歯周病で歯がボロボロだった場合や、単なる美容目的と判断された場合は、全額回収は難しくなります。
入れ歯やブリッジとの比較が最重要ポイント
保険会社はよく、「インプラントは高額な過剰診療であり、安価な入れ歯やブリッジで十分に機能回復できる」と反論してきます。
これに対抗するためには、なぜ入れ歯やブリッジではダメで、インプラントを選択することが医学的に合理的であるのかを説明できなければなりません。
たとえば、入れ歯では咀嚼力や発音に支障が出ることや、ブリッジにするためには両隣の健康な歯を大きく削る必要があり、将来的なリスクが高いことなどを主張します。
過去の裁判例でも、これらの長所や短所を比較検討し、医師の意見も踏まえたうえでインプラント治療の必要性が認められたケースが多数存在します。
そのため、主治医である歯科医師に、他の治療法では不十分である具体的な理由を記載した意見書や診断書を作成してもらうことが極めて重要です。
インプラント以外にも請求できる損害賠償項目
交通事故で歯を失った場合、インプラントの治療費そのもの以外にも請求できる賠償項目があります。
まず、初診料や検査費用(レントゲン、CTなど)、抜歯費用、薬代、通院にかかった交通費などの「治療関係費」が挙げられます。
また、怪我の治療のために病院へ通うことになった精神的苦痛に対する補償として、「入通院慰謝料」を請求できます。
さらに、治療を終えても歯を失った状態が残るため、後遺障害等級が認定されれば「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」という高額な賠償を請求することが可能になります。
歯の喪失による後遺障害等級と慰謝料
歯の一部を失ったり、インプラントなどの歯科補綴(ほてつ)を加えたりした場合、その本数に応じて後遺障害等級が認定される可能性があります。
たとえば、3歯以上に歯科補綴を加えた場合は第14級、5歯以上の場合は第13級、7歯以上の場合は第12級といったように、本数が増えるほど重い等級に該当します。
後遺障害として認められれば、弁護士基準(裁判基準)を用いることで、14級でも約110万円、10級(14歯以上)であれば約550万円もの後遺障害慰謝料を請求できます。
適切な等級認定を受けるためには、歯科医師に正確な後遺障害診断書を作成してもらうことが不可欠です。
将来のメンテナンス費や交換費用は請求できるか
インプラントは一生もつとは限らず、一般的に10年から20年程度で上部構造の交換が必要になったり、定期的なメンテナンスが欠かせなかったりします。
交通事故の治療費は原則として「症状固定(治療終了)」までの分しか認められませんが、将来のメンテナンス費や交換費用についても損害として請求できる可能性があります。
裁判例でも、症状固定時に将来必要になる可能性が高いと医学的に見込まれる場合は、事故と因果関係がある損害として認められたケースがあります。
ただし、将来の費用を認めてもらうハードルは高く、耐用年数や交換時期、年間のメンテナンス頻度などを医師の意見書で具体的に証明する必要があります。
示談前に弁護士へ相談すべき理由
インプラント治療は高額であり、保険会社との交渉は法的な知識と医学的な専門知識の両方が求められるため、被害者自身で対応するのは非常に困難です。
保険会社から「インプラントは認めない」と言われても安易に諦めず、また、不利な条件で示談書にサインしてしまう前に、必ず交通事故に強い弁護士にご相談ください。
弁護士に依頼すれば、医師と連携して必要性を証明する証拠を集め、最も高額な弁護士基準で慰謝料を計算して保険会社と粘り強く交渉してくれます。
一生付き合っていく大切な歯の問題だからこそ、適正な賠償をしっかりと受け取り、安心して治療に専念できる環境を整えましょう。
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