入通院慰謝料別表ⅠとⅡの違い 弁護士が徹底解説
1.慰謝料の3つの基準と「赤本」とは
交通事故でケガをして入院や通院を余儀なくされた場合、精神的・肉体的な苦痛に対する賠償として「入通院慰謝料(傷害慰謝料)」を請求することができます。
この慰謝料を計算する基準には、最低限の補償である「自賠責基準」、保険会社が独自に定める「任意保険基準」、そして過去の裁判例に基づく最も高額な「弁護士基準(裁判基準)」の3つが存在します。
弁護士が示談交渉や裁判を行う際には、日弁連交通事故相談センター東京支部が発行する「赤い本(民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準)」に記載された基準を用います。
この赤本には、入通院慰謝料を算定するための早見表として、「別表Ⅰ」と「別表Ⅱ」という2つの異なる表が用意されています。
どちらの表が適用されるかによって、最終的に受け取れる賠償金の額が数十万円単位で変わるため、その違いを正しく理解しておくことが極めて重要です。
2.別表Ⅰ(原則の表)が適用されるケース
別表Ⅰは、骨折、脱臼、靭帯損傷、頭部外傷などの重傷事案や、手術・入院を伴うようなケガの場合に適用される「原則的な基準表」です。
治療が長期化し、被害者の肉体的・精神的な苦痛がより大きいと客観的に判断されるため、慰謝料の金額は別表Ⅱよりも高く設定されています。
例えば、通院6ヶ月の場合の慰謝料の目安は、別表Ⅰを用いると116万円となります。
後遺障害が認定されるような重大なケガの場合にも、この別表Ⅰを利用することが一般的です。
レントゲンやMRIなどの画像検査で明確な異常が確認できる場合は、相手方保険会社に対しても別表Ⅰの適用を強く主張していくことになります。
3.別表Ⅱ(軽傷用の表)が適用されるケース
一方、別表Ⅱは、他覚所見(客観的な医学的異常)のないむち打ち症や、軽い打撲、軽い挫創(擦り傷や切り傷)などの「軽傷事案」を想定して作られた表です。
入院を伴わないケースが多く、外見や画像からはケガの程度が分かりにくいため、別表Ⅰと比べて慰謝料の金額は低く抑えられています。
例えば、むち打ち症で通院6ヶ月の場合の慰謝料の目安は、別表Ⅱを用いると89万円となり、別表Ⅰ(116万円)と比較すると約27万円の差が生じます。
交通事故の実務においては、多くの事案がむち打ちや打撲であるため、実際に最も頻繁に使用されるのはこの別表Ⅱの基準となります。
しかし、「軽傷という病名が付いているから」という理由だけで自動的に別表Ⅱが適用されるわけではなく、個別の症状や治療実態を丁寧に確認する必要があります。
4.表の選択を分ける「他覚所見」の重要性
別表Ⅰと別表Ⅱのどちらを用いるかを決定する上で、最も重要な鍵となるのが「他覚所見」の有無です。
他覚所見とは、被害者本人の「痛い」「しびれる」といった自覚症状だけでなく、医師や第三者が客観的に確認できる医学的な異常所見のことを指します。
具体的には、レントゲンやMRI、CTなどの画像所見や、医師による神経学的検査での異常反応などがこれに該当します。
たとえ病名が「むち打ち(外傷性頸部症候群)」や「頸椎捻挫」であっても、MRI検査で神経の圧迫が確認されるなど明確な他覚所見がある場合は、別表Ⅱではなく別表Ⅰによる高額な慰謝料を主張できる余地があります。
逆に、実際に激しい痛みがあっても、それを裏付ける客観的な医学的資料が乏しい場合は、別表Ⅱを基礎として検討されることになります。
5.慰謝料の計算方法と通院頻度の問題
赤本の早見表を使った計算は、原則として事故日から治療終了日(治癒または症状固定)までの「総通院期間(月数)」を基礎として行われます。
1ヶ月は30日として日割り計算を行い、入院期間と通院期間が交差する欄の数字を読み取ることで具体的な金額を算出します。
ただし、通院期間が長期にわたっているにもかかわらず、実際の通院頻度が極端に少ない(月に数回しか通院していない)場合は注意が必要です。
このようなケースでは、総通院期間ではなく、「実際の通院日数(実通院日数)の3倍から3.5倍」を慰謝料算定の基礎となる期間として修正計算されてしまうことがあります。
適正な慰謝料を受け取るためには、医師の指示に従い、症状に応じた適切な頻度(むち打ちのリハビリであれば週に2〜3回程度など)で継続的に通院することが不可欠です。
6.保険会社との交渉は必ず弁護士に依頼を
加害者側の保険会社は、被害者の過失がゼロであっても、最初から高額な弁護士基準(赤本基準)で慰謝料を提示してくることはまずありません。
保険会社は自社の支出を抑えるため、自賠責基準や独自の任意保険基準に近い低額な提示をしてきたり、本来は別表Ⅰが適用されるべき事案でも「むち打ちだから別表Ⅱだ」と決めつけてくることが多々あります。
このような不当な主張に対して、医学的知識や法律知識のない被害者ご自身が反論し、別表Ⅰの適用や適切な通院期間を認めさせることは極めて困難です。
交通事故に強い弁護士に依頼すれば、カルテや画像記録を精査して客観的な他覚所見を抽出し、裁判所の基準に基づく適正な慰謝料(弁護士基準)を強力に交渉してくれます。
少しでも提示額に疑問を感じたら、示談書にサインをしてしまう前に、一刻も早く弁護士の無料相談を活用して適正な賠償金を獲得してください。
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