交通事故むちうちで後から痛みが出てきたときにやるべきことと注意点
1. はじめに:交通事故後にむちうちの痛みが遅れて現れる理由
交通事故に遭った直後は「ケガはない」「痛みはない」と思っていたのに、帰宅後や数日経ってから首や肩に激しい痛み、頭痛、めまい、手足のしびれなどが現れるケースは非常に多く見られます。
これは、事故という非日常的でショッキングな出来事に直面し、体が極度の興奮状態(緊張状態)に陥るためです。
交感神経が刺激されてアドレナリンが大量に分泌されると、一時的に痛覚が麻痺し、ケガをしていても痛みを感じにくくなります。その後、精神的に落ち着きを取り戻したり、睡眠をとってリラックスしたりしたタイミングで、本来の痛みを自覚し始めるのです。
後から痛みが出てきた場合、「この程度の痛みで大げさにしたくない」「もう示談の話が進んでいるから言い出しにくい」と我慢してしまうと、治療費や慰謝料などの適正な賠償を受けられなくなる恐れがあります。
痛みや違和感があれば、直ちに正しい対処を行うことが重要です。
2. 後から痛みが出たときにやるべき4つのステップ
後からむちうちの症状(首・肩・背中の痛み、頭痛、吐き気、手足のしびれ、倦怠感など)が現れた場合は、以下の手順で速やかに行動してください。
1 すぐに「整形外科」を受診する
痛みを感じたら、何よりもまず整形外科などの医療機関を受診しましょう。「仕事が忙しいから」と受診を遅らせるのは非常に危険です。
事故から1週間〜10日以上経過してから初めて受診した場合、加害者側の保険会社から「そのケガは事故によるものではなく、日常生活で痛めたのではないか」と因果関係を疑われ、治療費の支払いを拒否される可能性が高くなります。
遅くとも事故から1週間以内には受診することが強く推奨されます。
2 医師に診断書を作成してもらう
病院を受診したら、事故に遭ったことと自覚症状(どこが、どのように痛むか、しびれはあるか等)を漏れなく正確に伝え、診断書を作成してもらいます。
初診時に伝えていなかった症状を後から主張しても、事故との因果関係が認められにくいため、少しの違和感であってもすべて医師に伝えることが大切です。
3 保険会社に連絡する
病院へ行く前、または行った直後に、自分と相手方の任意保険会社へ連絡を入れます。
相手方の保険会社に「〇〇病院に通院する」と伝えておくことで、保険会社が病院へ直接治療費を支払う「任意一括対応」をしてくれるケースが多く、窓口での治療費の立て替え負担を避けることができます。
4 警察で「物損事故」から「人身事故」への切り替えを行う
事故現場で痛みがないと申告した場合、警察では「物損事故」として処理されています。
物損事故のままでは、ケガに対する治療費や慰謝料が適切に支払われないリスクがあります。
医師に書いてもらった診断書を管轄の警察署(交通課)に持参し、「人身事故」への切り替え手続きを行ってください。
これも事故から日数が経ちすぎると警察が受け付けてくれないことがあるため、早めに行う必要があります。
3. むちうち治療における重要な注意点
むちうちの治療を進めるにあたり、賠償金の減額や打ち切りを防ぐための注意点があります。
1 整骨院(接骨院)への通院は必ず医師の許可を得る
むちうちの治療で整骨院や接骨院に通いたいと考える方は多いですが、自己判断で通院してはいけません。
整骨院での施術は医療行為ではないため、保険会社から治療の必要性を否定されることがあります。
整骨院に通う場合は、必ず事前に整形外科の医師の許可を得て、整形外科での定期的な診察(月1〜2回程度)と並行して通うようにしてください。
2 適切な頻度で通院を継続する
「痛みが少し引いたから」「忙しいから」と自己判断で通院を長期間中断すると、その時点で「ケガは完治した」とみなされ、治療費が打ち切られる恐れがあります。医師の指示に従い、症状が落ち着くまで(目安としては週に2〜3回程度)継続して通院することが、ケガの重症度を証明し、適切な慰謝料を受け取るために重要です。
3 必要な検査(MRIや神経学的検査)を受ける
むちうちはレントゲン(X線)では骨の異常しか確認できず、神経や靭帯の損傷は写りません。手足のしびれなどの神経症状がある場合は、必ずMRI検査を受けてください。
また、ジャクソンテストや深部腱反射テストといった神経学的検査を受けることで、後遺障害認定に必要な医学的証明を残すことができます。
4. 事故とケガの「因果関係」を疑われないためのポイント
交通事故の損害賠償請求において最も重要なのが「交通事故とケガの因果関係」の証明です。
後から痛みが出た場合、この因果関係が一番の争点になります。
因果関係を証明するためには、以下の要素が重要になります。
・受傷直後(遅くとも1週間以内)に医療機関を受診していること
・初診時から症状の訴えが一貫していること(後から次々と新しい痛みを主張しない)
・事故の規模(車両の損傷具合など)から見て、ケガを負うことが不自然ではないこと
これらが欠けていると、裁判等でも「事故によるケガとは認められない」として賠償額がゼロになるケースもあります。
5. むちうちで認定される後遺障害と慰謝料の相場
半年ほど治療を続けても痛みやしびれが残ってしまった場合、「後遺障害等級認定」の申請を行います。むちうちで認定される可能性があるのは以下の2つです。
・14級9号(局部に神経症状を残すもの):自覚症状が医学的に説明可能な場合。
・12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの):MRI画像や神経学的検査で異常が客観的に証明できる場合。
慰謝料の計算には、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準(裁判基準)の3つがあります。
加害者側の保険会社は低い基準で提示してきますが、弁護士に依頼して弁護士基準を適用できれば、後遺障害慰謝料や入通院慰謝料が数倍に跳ね上がる(14級で約110万円、12級で約290万円等)可能性があります。
6. 示談成立後に痛みが出てきた場合はどうなる?
原則として、加害者側とすでに示談書を取り交わしてしまった後から痛みが出てきても、追加で治療費や慰謝料を請求することはできません。
示談書には通常「今後一切の請求を行わない」という条項が含まれているためです。
ただし、「物損事故部分のみを先に示談していた場合」や、「事故直後に現場でよく分からないままサインさせられた場合」など、例外的に後からの請求が認められるケースもあります。
どうしても納得がいかない場合は、早急に弁護士に相談してください。
7. まとめ:不安なときは早めに弁護士へ相談を
交通事故のむちうちは、後から痛みが出やすく、外見からはケガの程度が分かりにくいため、保険会社との間で「治療費の打ち切り」や「因果関係の否定」といったトラブルが非常に起こりやすい傷病です。
適切な治療を受け、正当な賠償金を受け取るためには、事故直後からの正しい初動対応と、専門的な医学的・法的知識が不可欠です。
「まだ示談の時期ではないから」と後回しにせず、通院を始めた段階から交通事故に精通した弁護士に相談することで、正しい通院方法や検査のアドバイスをもらい、最終的な賠償金を大幅に増額させることが可能になります。
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