交通事故で偽関節になってしまった場合の後遺障害・慰謝料などを弁護士が徹底解説  

1.はじめに:骨折が治らない「偽関節(仮関節)」とは

交通事故で強い衝撃を受けて骨折した場合、通常は数ヶ月の治療やリハビリを経て骨がくっつき(骨癒合)、元の状態へと回復していきます。

しかし、事故の規模が大きく骨が粉砕されてしまったり、骨折した部分の血流が悪くなったりした場合、再生の過程で骨がうまくくっつかず、本来関節ではない部分がまるで関節のようにグラグラと異常に動いてしまう状態になることがあります。

これを「偽関節(ぎかんせつ)」または「仮関節」「癒合不全」と呼びます。

偽関節になってしまうと、患部の慢性的な痛みやしびれだけでなく、力が入りにくくなったり、歩行や細かい作業などの日常動作に重大な支障をきたしたりと、被害者のその後の人生に大きなダメージを残します。

このような深刻な状態になった場合、適正な補償(後遺障害慰謝料や逸失利益など)を受け取るためには「後遺障害等級認定」を正確に獲得することが不可欠です。

本記事では、交通事故によって偽関節になってしまった場合の後遺障害等級の基準、慰謝料の相場、そして適正な賠償を勝ち取るための重要ポイントについて、弁護士が徹底的に解説します。

 

2.偽関節になりやすい部位と発生原因

偽関節は、主に腕や脚にある「長管骨(ちょうかんこつ)」と呼ばれる細長い骨で発生しやすくなります。

 

 

【上肢(腕)の長管骨】

・上腕骨(肩から肘までの骨)

・橈骨(とうこつ)、尺骨(しゃっこつ)(肘から手首までの2本の骨)

【下肢(脚)の長管骨】

・大腿骨(股関節から膝までの骨)

・脛骨(けいこつ)、腓骨(ひこつ)(膝から足首までの2本の骨)

【偽関節が発生する主な原因】

・骨折のズレ(転位)が大きく、骨同士がしっかりと接触していない。

・粉砕骨折などにより骨が欠損し、血行不良(血流障害)が起きている。

・骨髄炎などの細菌感染や強い炎症が起きている(感染性偽関節)。

・糖尿病などの内分泌障害や栄養障害がある。

 

 

一般的に、骨折から6ヶ月程度経過しても骨がくっつかず、レントゲンなどで骨折部分にズレや空洞が確認される場合には、偽関節(癒合不全)と診断される可能性が高くなります。

 

3.偽関節で認定される「後遺障害等級」の基準

治療(再手術や骨移植など)を尽くしても偽関節が治らず、医師から「症状固定(これ以上治療しても改善が見込めない状態)」と診断された場合、後遺障害等級の認定申請を行います。

偽関節による後遺障害は、発生した部位(上肢か下肢か)と、「硬性補装具(金属やプラスチックでできた強固なサポーターなど)」を常時必要とするほどの著しい運動障害があるかどうかで、7級または8級に認定される可能性があります。

 

 

① 7級(著しい運動障害を残すもの)

患部を固定するために「常に硬性補装具を必要とする」重篤な状態です。

・7級9号:1上肢(片腕)に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの(上腕骨、または橈骨と尺骨の両方の癒合不全)。

・7級10号:1下肢(片脚)に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの(大腿骨、または脛骨と腓骨の両方、あるいは脛骨のみの癒合不全)。

② 8級(偽関節を残すもの)

偽関節は残っているものの、「常に硬性補装具を必要とはしない」状態、あるいは「時々硬性補装具を必要とする」状態です。

・8級8号:1上肢(片腕)に偽関節を残すもの。

・8級9号:1下肢(片脚)に偽関節を残すもの。

 

 

なお、偽関節の要件(7級や8級)には該当しなくても、骨が曲がってくっついてしまった場合などは、128号「長管骨に変形を残すもの」として認定される可能性があります。

 

4.偽関節で受け取れる「慰謝料」と「損害賠償」の相場

偽関節によって後遺障害等級が認定されると、治療費や休業損害などの基本的な賠償に加えて、高額な「後遺障害慰謝料」と「後遺障害逸失利益」を請求できるようになります。

慰謝料の金額は、「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準(裁判所基準)」の3つの算定基準のうち、どれを用いるかで大幅に変わります。弁護士が介入して交渉する「弁護士基準」が最も高額で、本来被害者が受け取るべき正当な金額となります。

 

 

【後遺障害慰謝料の相場(自賠責基準 → 弁護士基準)】

・8級の場合:331万円 → 830万円

・7級の場合:419万円 → 1,000万円

 

 

【後遺障害逸失利益について】

後遺障害によって労働能力が低下し、将来得られるはずだった収入が減ってしまうことに対する補償です。

計算式:「基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

労働能力喪失率は、8級で45%7級で56%と定められており、偽関節のように労働能力の喪失率が高い(生活や仕事への影響が大きい)後遺障害の場合、逸失利益の額が数千万円単位にのぼることも珍しくありません。

 

 

 

5.偽関節の適正な後遺障害認定と賠償を得るための「4つの重要ポイント」

偽関節はレントゲンやCT画像で骨の状態(他覚的所見)がはっきりと確認できるため、比較的認定されやすい障害と思われがちです。しかし、保険会社との交渉で適正な賠償を勝ち取るためには、以下のポイントを押さえておく必要があります。

 

 

① 定期的なレントゲン・CT検査による骨の経過の記録

事故直後の画像だけでなく、「治療を継続しても骨が癒合しなかった」という経過を証明するために、定期的にレントゲンやCTなどの画像検査を受け、医師に骨の状態をカルテに記録してもらうことが不可欠です。

 

 

② 医師への「日常生活への具体的な支障」の伝達

偽関節は、画像上は明確であっても、それが被害者の仕事や日常生活に「どのような具体的な支障(歩けない、力が入らない、物を持ち上げられない等)」を与えているかが、逸失利益の計算などで激しく争われることがあります。特に8級(常に補装具を必要としない状態)の場合、第三者から支障の度合いが見えにくいため、日頃から医師に具体的な不便さを伝え、後遺障害診断書にしっかりと記載してもらうことが重要です。

 

 

③ 再手術(偽関節手術)の要否に関する慎重な判断

骨移植などの偽関節手術を提案された場合、手術による身体的負担や成功率などを考慮して「手術を受けない」という選択をすることもあります。裁判例でも「手術による負担や不確実性を考慮し、手術を受けなかった判断は合理的である」として、そのまま後遺障害を認めたケースが存在します。治療方針に迷った場合は、セカンドオピニオンを受けるなどして慎重に判断してください。

 

 

④ 症状固定を急がず、保険会社の治療費打ち切りに安易に応じない

偽関節の治療には年単位の長期間を要することが多く、相手の保険会社から「もう症状固定にしてはどうか」と治療費の打ち切りを打診されることがあります。しかし、症状固定を判断するのはあくまで「医師」です。保険会社の言葉を鵜呑みにせず、医師の指示に従って必要な治療を継続してください。

 

 

 

6.まとめ:偽関節の賠償問題は交通事故・医療に強い弁護士へ

偽関節は、被害者のその後の人生に多大な影響を与える重篤な後遺障害です。

認定される等級が7級か8級かによって、あるいは逸失利益の労働能力喪失率がどう評価されるかによって、最終的な賠償金額は数千万円単位で変動する可能性があります。

そのため、保険会社の提示する低い基準(任意保険基準)の金額で安易に示談してしまうのは絶対に避けるべきです。

適正な後遺障害診断書の作成サポート、画像所見の精査、そして保険会社との専門的な賠償金交渉には、医学的・法的な知識を併せ持つ弁護士の力が不可欠です。

もし、医師から「骨がうまくくっついていない」「偽関節になるかもしれない」と診断された場合は、治療中の早い段階から、交通事故や医療問題に強い弁護士に相談することをお勧めします。

弁護士費用特約を利用すれば、費用の自己負担なく弁護士にすべてを任せることも可能です。正当な補償を獲得し、安心して今後の生活を送るために、まずは無料相談などを活用して専門家のアドバイスを受けてください。

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