追突事故の慰謝料について
交通事故でよくある追突事故。
そんな追突事故で受け取れる慰謝料についてここでは説明していきます。
1 慰謝料の種類
①入通院慰謝料
入通院慰謝料とは、交通事故により、入通院を強いられた精神的苦痛に対する慰謝料をいいます。
基本的には、通院開始日から完治日・症状固定日までの通院期間、実通院日数、ケガの部位や程度などに基づき、金額が算定されます。
②後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料は、事故により不幸にも症状が残存し、自賠責保険にて後遺障害認定されたときに認められる慰謝料です。
後遺障害認定は後遺障害診断書を医師に書いてもらい、所定の方法で自賠責保険へ提出し後遺障害等級認定の審査を受けることで審理されます。
審理の結果後遺障害認定されれば支払われることになります。
後遺障害等級は1級から14級まであり、1級が最も症状が重く、14級が最も症状が軽く、各等級に応じ、慰謝料の金額の基準が定められています。
また、交通事故の慰謝料には3つの基準があります。
①自賠責基準、②任意保険基準、③弁護士基準です。
自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準の順で、高額になるのが通常です。
①自賠責基準
自賠責保険による支払基準で、最低補償の基準です。
入通院慰謝料、治療費、休業損害など傷害部分の賠償金について120万円の支払上限額があります。
②任意保険基準
各任意保険会社が独自に設定する基準で、保険会社により金額が異なり、非公表となっています。
③弁護士基準
裁判所で認められる基準になります。
この基準は、弁護士が代理人となってはじめて認められます。
2 一定期間で治療費が打ち切られることがある
追突事故によるケガで最も多いのが、むちうち(頚椎捻挫)です。
むちうちの場合、事故後、約3~6ヶ月後に、加害者側の保険会社から治療費の打ち切りを打診されるケースが多くなっています。
特に、弁護士を入れないケースだと、かなり早期に打ち切りを提案してきます。
保険会社も営利企業であるため、自賠責保険が支払う120万円の範囲内にしようとすることが多く、そのために早期打ち切りを目指してきます。
しかし、まだ完治せず通院したいにもかかわらず、治療を終了し、その時点を症状固定としてしまうと、その分通院期間が短くなりますので、入通院慰謝料が低額になり、後遺障害等級認定の際にも不利になるおそれがあります。
症状固定を決めるのは保険会社ではなくあくまで医師です。治療がまだ必要であれば医師と相談のうえ、完治または症状固定するまで、通院を続けることが望ましいでしょう。
仮に、治療がまだ必要なのにもかかわらず治療費が打ち切られてしまったとしても、健康保険などを使い治療を続け、自己負担の治療費を後日保険会社に請求するという方法もあります。
3 後遺障害として認定されにくい
事故でむちうちになり、治療が終了したにもかかわらず、後遺症が残った場合は、後遺障害等級認定の申請を受けることになります。
しかし、むちうちに関しては、痛みやしびれなどがあっても、明らかな外傷が見えず、レントゲンやMRIなどの画像所見が出ないことも多く、後遺障害等級認定を受けるのは簡単ではありません。
適正な後遺障害認定を受けるには、適切な時期に、適切な治療をし、適切な検査をし、更に、症状が後遺障害認定を受けるに足りる内容となっている必要があります。
医学的知識や後遺障害に係る知識が必要となりますので、後遺障害等級認定の際に医師の診察を受けると同時に、交通事故問題に精通した弁護士に相談することをおすすめします。
4 入通院慰謝料の相場
追突事故の入通院慰謝料の相場をみていきましょう。
他覚所見のないむちうちを想定し、入通院慰謝料を算定します。
なお、他覚所見のないむちうちとは、痛みやしびれなどの自覚症状があるものの、レントゲンやMRIなどの検査画像上では特に異常が見当たらない、むちうちのことをいいます。
(具体例)むちうち、通院180日、実通院日数60日の場合
①自賠責基準では51万6000円、②弁護士基準では89万円となります。
①自賠責基準では、日額4300円に基づき、治療にかかった日数を乗じて、入通院慰謝料を算定します。計算式は、以下のとおりとなります。
4300円×治療日数=入通院慰謝料
→治療日数は、以下のいずれか小さい方の日数を治療日数として、慰謝料額を算定します。
a 入院期間+通院期間(治療期間)
b 実際に入院、通院した日数×2
今回のケースでは、通院期間は180日、実際に通院した日数は60日であり、180日>60日×2のため、120日を治療日数とすることになります。
したがって、4300円×120日=51万6000円となります。
②弁護士基準
通院開始日から完治または症状固定日までの通院期間に基づき、以下の手順で算定します。
他覚所見のないむちうちは軽症にあたるので、「算定表・別表Ⅱ」を使い計算します。
通院が6か月なので89万円となります。
5 後遺障害慰謝料の相場
追突事故による後遺障害等級は、むち打ちでは、12級13号か14級9号となります。
12級では、自賠責基準では94万円、弁護士基準では290万円となります。
14級では、自賠責基準では32万円、弁護士基準では 110万円となります。
6 慰謝料の基準の決まり方
加害者側の任意保険会社と示談交渉を開始し、保険会社から提案された慰謝料の金額に合意をするか、または弁護士に依頼し、弁護士基準により増額した慰謝料額を請求することになるのが一般的です。
通常、交通事故に遭った場合、被害者自身が加入する任意保険会社に示談交渉を代行してもらえることが多いですが、被害者側に過失割合がまったく無い事故の場合、基本的に、自身が加入する任意保険会社の示談交渉サービスが使えません。
追突事故は被害者に過失の無いケースが多いため、多くの被害者が自分自身で加害者側の保険会社と交渉しなければならない状況です。
そのため、過失のない追突事故は、事故後の早い段階から弁護士のような専門家に相談し、対応を変わってもらう方が良いでしょう。
7 交通事故において弁護士に依頼するメリットについてご説明します。
自分で、必要書類の収集や保険会社との示談交渉などの手続きを行うことは、ケガの治療や仕事に追われる中、時間的にも精神的にも、かなりの負担になると思われます。
この点、弁護士に依頼すれば、必要書類の収集や申請手続き、示談交渉などわずらわしい手続きを任せることができるため、ストレスから解放され、安心して治療に専念することが可能です。
また、弁護士に依頼すれば、保険会社は弁護士基準での賠償に応じますし、依頼しないと弁護士基準にはなりません。訴訟を提起される可能性があるから弁護士基準での交渉をしてくれるのであり、一般の方が訴訟を提起するといっても、適切な訴訟遂行をできる可能性は低いため、保険会社も弁護士基準を利用することはありません。
8 追突事故の慰謝料を増額するためのポイント
追突事故の慰謝料を増額するために重要なことは下記の通りです。
①適切な通院日数で治療する
入通院慰謝料の金額は、基本的には、通院日数や通院期間が長くなれば、増えることになります。
しかし、通院日数が少ない場合や、通院期間に対して通院日数が少なすぎると慰謝料が減額される可能性があります。
具体的には、週2回以上整形外科に通うことが必要となります。
そして、通院日数は、後遺障害等級認定においても、大きな判断要素となります。
通院日数が少ないと、「それほどの怪我ではないんだな」と自賠責保険に判断されてしまいます。
ただし、過剰に通院日数が多いと、治療の必要性を疑われ、治療が早期に打ち切られたり、通院日数としてカウントされなかったりする可能性もあるので注意が必要です。
自賠責保険の限度額である120万円を簡単に超えるような治療費がかかっていると相手保険会社も早々に打ち切りを検討します。
また、整骨院・接骨院に通院している場合、過剰な部位を請求すると即時に打ち切りを主張してくるケースもあります。
そのため、交通事故の通院は、主治医と相談しながら、怪我の治療に必要な範囲で、適切な通院頻度を保つことが必要です。
むちうちであれば、主治医の指示のもと、週2~3回、1ヶ月に10日程度のペースで通院することをおすすめします。
②整骨院や接骨院ではなく整形外科を受診する
事故で負傷した場合、初診は整骨院や接骨院ではなく医師のいる整形外科を受診することが必要です。
保険会社から整骨院や接骨院は「治療」として評価されにくく、その通院期間について、通院慰謝料が認められなかったり、減額されたりするおそれがある。
整形外科の主治医の許可を得ずに整骨院に行く場合、保険会社から、整骨院での施術は医学的に必要のない治療と主張され、治療費の支払いを拒否されるおそれがある
事故直後に自覚症状がなく、病院へ行かないと、加害者側から事故とケガとの因果関係は薄いと判断され、十分な補償が得られなくなる可能性がある。
一番大きいのは、整骨院・接骨院では後遺障害診断書を作成できないため、後遺障害の申請が出来ません。
最近よくあるのですが、整骨院・接骨院の紹介で提携先の整形外科に月1,2回だけ通う場合、後遺障害認定においては、その月1,2回だけが治療と考えられ、後遺障害認定がされなくなることがあります。
手技を中心とした整骨院・接骨院の方が体が楽になること多く、人気も高いのですが、以上のことは注意が必要です。
③治療費の打ち切りには安易に応じない
加害者側の保険会社から症状固定・治療費の打切りを打診されたとしても、安易に応じてはいけません。
入通院慰謝料は、基本的には、入通院期間の長さに比例して増えるものです。症状固定の時期が早すぎると、通院期間が短くなるため、入通院慰謝料が低額になり、後遺障害等級認定の際にも不利になるおそれがある
症状固定としてしまうと、以後、治療費や入通院慰謝料などの賠償金が支払われなくなってしまう
症状固定を決めるのはあくまで医師です。医師と相談の上、完治または症状固定するまで、通院を続けるのが良いでしょう。
ただし、昨今の保険会社は甘くなく、こちらの言い分を無視して早々に打ち切りにしようとする場合もあります。
そういった場合、弁護士に相談することをおすすめします。
ケースにもよりますが、弁護士を入れることで治療期間を延ばすこともできるケースがあります。
④適切な後遺障害等級を認定してもらう
自賠責保険を通じて後遺障害等級認定を受けると、後遺障害慰謝料や逸失利益などを加害者側に請求できるようになります。
後遺障害等級が上がるにつれて、慰謝料も増額するため、認定される等級が何級かについてはとても重要です。
後遺障害の認定を受けるためには、基本的に、6ヶ月以上は病院へ通院して、治療を継続していることが必要とされています。
そのため、たとえ相手方の保険会社に治療費の支払い打ち切りを迫られたとしても、簡単に応じないようにしなければなりません。痛みなどの症状が残っていて、治療がまだ必要ならば、医師の指示のもと、通院治療を続けることが大切です。
更に、適切な後遺障害認定を受けるには、適切な時期に、適切な治療と検査を受ける必要があります。
また、後遺障害診断書の記載内容も重要です。
医師の方は、診断や治療のプロですが、必ずしも後遺障害認定を受けるために必要な後遺障害診断書の記載の仕方を知っているわけではありません。
そういったことに精通している弁護士に助言を受けることが重要です。
当事務所でも約半数の後遺障害診断書について、修正や追記をお願いしています。
また、後遺障害等級認定の申請方法には、加害者側が申請を行う①「事前認定」と、被害者が自ら自賠責保険へ申請を行う②「被害者請求」と2つあります。
しかし、より適切な等級認定を受けるためには、自ら被害者請求を行うことをおすすめします。
被害者請求であれば、被害者に有利な証拠(医証、文書)を提出でき、後遺症の症状や程度をより確実に審査機関に主張できるため、適正な後遺障害等級に認定される可能性が高まります。
また、後遺障害等級認定の結果に納得できない場合は、審査機関に対して、異議申し立てを行うことも可能です。
9 追突事故で慰謝料以外の賠償金
追突事故でケガを負った場合、慰謝料以外にも、以下のような賠償金を請求することが可能ですので、ご確認ください。
①治療費・入院費 | 病院で治療を受けた際にかかった診察料、投薬料、検査料、入院費、手術費など |
②通院交通費 | 通院や入院、転院するときにかかった交通費 |
③付添看護費 | 通院や入院の際に付き添え看護した人に対する日当 |
④器具等購入費 | 義足や義歯、松葉づえ、コルセット、車椅子などの購入費用、将来の買い替え費用 |
⑤自宅・家具等の改造費 | 後遺障害が残った場合に、自宅をバリアフリーに改造する必要が生じた場合の家屋改造費用など |
⑥葬儀関係費 | 葬儀や法要、仏具購入などにかかった費用 |
⑦休業損害 | 事故によるケガが原因で仕事を休んだことにより生じた収入の減少分 |
⑧逸失利益 | 事故により後遺障害が残ったり、死亡したりしたことで失われた将来の収入分 |
以上追突事故の慰謝料について述べてきました。
事案により、気を付けるべきことややってはいけないことも変わってきます。
追突事故にあってしまったなら、まずは当事務所の初回無料相談をご利用ください。
今後のどうすればいいのかわかるようにしっかりとアドバイスをさせていただきます。
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