胸椎圧迫骨折の後遺障害・等級認定の基準について
胸椎圧迫骨折は、脊椎のうちの胸椎と呼ばれる部分が圧し潰されて起きる骨折です。
胸骨圧迫骨折を起こすと、骨折した部分が激しく痛み、息苦しくなる、立ち上がる、歩くなど日常生活の中で避けがたい身体の動きをすることでさらに痛みが増します。
胸椎圧迫骨折はレントゲンやMRIなどの画像により診断されますが、後から骨折が判明することもあるため、痛みの有無に関係なく事故に遭ったら必ず病院で診断することが必要です。
1 胸椎圧迫骨折の治療治療方法
- コルセットを装着し安静にして骨を癒合する保存療法
- 手術によりスクリューなどで骨を固定する手術療法
が一般的です。
2 交通事故による胸椎圧迫骨折の後遺症
胸椎圧迫骨折は下記の後遺症を残すおそれがあります。
- 背部痛
立ち上がるときや歩くときに強い痛みを感じるため、歩行や外出を控えるようになりがちです。
- 背中の曲がり
胸椎の椎体が潰れることで、背骨が異常な形に曲がることや、ゆがむことがあります。
- 歩行障害
背中の曲がりがひどくなる常時前かがみの姿勢になり、歩行障害をおこすこともあります。
- 逆流性食道炎など消化器症状
背骨が曲がった状態で骨が癒合すると、反対に腹部が常に圧迫されることになります。
すると胃液が胃から食道へと逆流して、炎症をおこす逆流性食道炎になることもあります。
- 神経障害
胸椎圧迫骨折を起こすと、手足にしびれや麻痺などの神経症状が現れることがあります。
交通事故の強い衝撃で圧迫骨折を起こすと、骨折に加えて脊椎の脱臼を起こすこともあります。
3 胸椎圧迫骨折の後遺障害と等級
交通事故による胸椎骨折で後遺症が残ってしまった場合には、後遺障害等級の認定を受けることが必要になります。
6級5号の後遺障害
後遺障害の認定等級6級5号が認定されるのは、以下のいずれかの条件に該当している場合です。
- 脊椎に著しい変形を残すもの:レントゲンやMRI、CTなどの画像から、強行圧迫骨折が確認でき、以下のいずれかに該当する場合です。
- 脊椎圧迫骨折により2個以上の椎体の前方の椎体高が著しく減少し、後彎(脊椎が異常に曲がって後ろに突き出している状態)があるもの
- 脊椎圧迫骨折により1個以上の椎体の前方の椎体高が減少し、後彎があると同時にコブ法により側彎度(背骨が左右に曲がった角度)が50度以上のもの
- 脊椎に著しい運動障害を残すもの
- 胸椎に圧迫骨折があり、そのことがレントゲンなどの画像で確認できるもの
- 胸椎に脊椎固定術が行われたもの
- 後背腰部軟部組織に明らかな器質的な変化が見られるもの
8級2号の後遺障害
後遺障害の認定等級8級2号が認定されるのは、以下のいずれかの条件に該当している場合です。
- 脊椎に運動障害を残すもの
以下のいずれかにより、胸部の可動域が参考可動域角度の半分以下に制限された状態です。
→胸椎に脊椎圧迫骨折が残っており、そのことがレントゲンなどの画像で確認できるもの
→胸椎に脊椎固定術が行われたもの
→後背腰部軟部組織に明らかな器質的な変化が見られるもの
- 頭蓋・上位頚椎間に著しい異常可動性があるもの
11級7号の後遺障害
後遺障害の認定等級11級7号に認定されるのは、以下のいずれかの条件に該当する場合です。
- 脊椎に変形を残すもの
- 脊椎圧迫骨折を残しており、レントゲンなどの画像でそれを確認できる場合で、次のいずれかに該当する場合です。
- 脊椎圧迫骨折を残しており、レントゲンなどの画像で確認できるもの
- 脊椎固定術が行われたもの(移植した骨が脊椎のどこかに吸収されたものは除く)
- 3個以上の脊椎について、椎弓切除や椎弓形成の手術を受けたもの
4 胸椎骨折の後遺障害認定が認められにくい理由
交通事故で胸椎圧迫骨折を起こしても、すべてのケースで後遺障害認定が認められるわけではありません。
むしろ、胸椎圧迫骨折の後遺症が残っても後遺障害等級に認定されないことがあり、注意が必要です。
特に、11級7号の等級認定では、胸椎圧迫骨折による椎体の損壊程度の明確な基準がないため、脊柱の変形障害が認定されにくくなっています。
また、保存療法でコルセットを装着していても、脊椎の可動域制限を引き起こす原因が判りにくいため、6級5号、8級2号が認定されることは非常に難しいでしょう。
反対に手術療法では、脊椎の固定範囲が明確であり、多堆間固定術では脊椎の運動障害が認定されやすくなります。
5 後遺障害認定の流れ
後遺障害認定を受ける場合は、加害者側の保険会社を通して行う場合と自分で行う場合の2通りがあります。
- 事前認定
事前認定とは、加害者側の保険会社を通じて後遺障害認定の申請を行う方法です。
被害者は、加害者側の保険会社の指示に従い、後遺障害診断書を提出します。
次に、保険会社から自賠責保険会社に診断書が提出され、さらに損害保険料率算出機構において後遺障害認定が行われます。
提出書類も、基本的には後遺障害診断書のみで、その他の書類は保険会社が集めることになります。
- 被害者請求
被害者請求とは、加害者の保険会社を通さず自分で後遺障害認定の申請を行う場合をいいます。
被害者は、加害者の自賠責保険会社に自分で用意した必要書類を提出して後遺障害認定の申請をし、損害保険料算出機構で認定を受けることになります。
6 逸失利益について
後遺障害等級が認定されたら、相手方の保険会社と損害賠償の交渉を行います。
注意しなければならないのは、後遺障害の逸失利益を請求する場合、保険会社ではこれを認めないように様々な反論をしてくる可能性がある点です。
被害者側では、あらためて骨折の程度や内容、事故後から症状固定に至るまで、さらには現在に至るまでの後遺症による痛みやしびれなどの症状を医療記録により証明することが必要になります。
具体的な症状と仕事内容をしっかりと立証しないと中々認めてもらえません。
逸失利益を認めてもらうためには、専門性を有してい弁護士に依頼することが確実といえます。
以上、胸椎圧迫骨折について述べてきました。
圧迫骨折になるほど大きな怪我を負っているのですから、しっかりとした賠償金を得るべきです。
相手保険会社は色々と理由をつけてくるでしょうが、泣き寝入りしないようにしましょう。
交通事故で胸椎圧迫骨折させられ、お悩みの場合、当事務所の初回無料相談をご利用ください。
今後起きるべきこと、その対処法、してはいけないことを具体的にアドバイスさせていただきます。
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