交通事故のむちうち症ではないと疑われないための対処法
交通事故に遭い、首が痛いにもかかわらず、相手保険会社から
- 「交通事故とは関係のない怪我」
と言われてしまうことがあります。
ほとんどのケースではそのようなことにはならないのですが、何も知らないでやるべきことをやらないとそうなってしまいます。
以下で説明していきます。
まず、どうしてこのようなことが起きてしまうかというと、むちうちは外見からでは症状が客観的に判断し難いため、他覚的所見(骨折などの身体の異常を示すはっきりとした根拠)がないことが原因となります。
しかし、普通にやるべきことをやれば、殆どのケースで交通事故によるむち打ちとして扱われます。
むち打ちとは
むち打ちとは、交通事故などの外部的な衝撃により頚髄(首の骨) が急激に振動し、中を通っている頸髄が損傷してしまう傷病です。
頸椎の中には脳から身体へと伝わる神経である「頸髄」が通っています。頸髄自体は非常に脆い組織なので、追突事故などで急な力が加わると頸椎が一瞬S字型にしなって中を通っている頸髄が簡単に傷んでしまうのです。
神経は身体の各部へ脳からの指令を伝える重要な組織ですから、ここが傷むと身体のさまざまな部分に痛みやしびれなどの症状が出てしまいます。これがむち打ちの基本的なメカニズムです。
むち打ちの症状には以下のようなものがあります。
むち打ちの症状
- 首を動かせない
- 首が痛い
- 肩こり、背中のコリ
- めまい、耳鳴り
- 全身のだるさ
- 頭痛、頭重感
- 腕の痛みやしびれ
- 感覚の鈍麻
「むち打ち」は医学的な正式名称ではありません。
- 軽い場合には「頸椎捻挫」や「外傷性頸部症候群」
- 「椎間板ヘルニア」や「脊柱管狭窄症」を伴うケース
- 「神経根」にまで損傷が及ぶ場合、交感神経に異常が発生する「バレ・リュー症候群」
- 脊髄にまで症状が及ぶ「脊髄損傷型」
- 脳の膜が破れてしまう「低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)」
正式にはさまざまな診断名がつき、症状の内容や治療方法も異なります。
一般的に「むち打ち」という場合には「頸椎捻挫」や「外傷性頸部症候群」となるケースが多数です。
むち打ちで後遺障害等級認定を受けると賠償金が大幅にアップできます。
交通事故には「後遺障害等級認定」という制度があります。
これは、交通事故で残った後遺症を14段階の等級に分けて正式に「後遺障害」として認定する制度です。
交通事故でケガをすると、治療を受けても完治するとは限りません。目が見えなくなる、腕を失う、脳障害が発生するなどいろいろな後遺症が残る可能性があるでしょう。
また被害者は事故後も長期間辛い後遺症を抱えたまま生活しなければなりません。当然精神的苦痛も強くなります。
そこで、後遺症が残った被害者には残らなかった被害者よりも高額な賠償金が支払われる仕組みになっています。
むち打ちでも、後遺障害認定を受けられる可能性があります。
後遺障害認定を受けられると、以下の2種類の賠償金が支払われます。
後遺障害慰謝料
交通事故で後遺障害が残ると、被害者は強い精神的苦痛を受けるので「慰謝料」が支払われます。これは通常の「入通院慰謝料」とは別計算となるので、後遺障害認定されると慰謝料額が大きくアップします。
後遺障害逸失利益
後遺障害逸失利益は、後遺障害が残ったことによって働けなくなり、本来得られるはずだったのに得られなくなった収入に対する補償です。
後遺障害が残ると、人は以前と同じようには働けなくなるでしょう。労働能力が低下するため生涯収入が落ちると考えられます。そこでその低下した収入を「逸失利益」をして払ってもらえるのです。
後遺障害慰謝料も後遺障害逸失利益も、認定された「後遺障害の等級」によって大きく変わります。後遺障害には14段階の等級があるので、高額な支払を受けるためにはより高い等級を獲得する必要があります。
参考までに後遺障害の等級ごとの後遺障害慰謝料の金額を示します。
後遺障害慰謝料の額
- 1級 2800万円
- 2級 2370万円
- 3級 1990万円
- 4級 1670万円
- 5級 1400万円
- 6級 1180万円
- 7級 1000万円
- 8級 830万円
- 9級 690万円
- 10級 550万円
- 11級 420万円
- 12級 290万円
- 13級 180万円
- 14級 110万円
後遺障害逸失利益の金額も、認定された後遺障害の等級によって大きく異なります。
ただし逸失利益は被害者の年齢や事故前の年収によっても数字が違ってくるので、認定等級によって一律には計算できません。
概算でいうと、後遺障害1級となった場合には後遺障害逸失利益は1億円を超えるケースもあります。後遺障害12~14級の場合、数十万から数百万円程度になるケースが多いでしょう。
交通事故で後遺症が残ったら、慰謝料や逸失利益を受け取るために必ず後遺障害認定を受けるべきといえます。
では、交通事故でむち打ちになったら、具体的に何級が認定される可能性があるのでしょうか?
むち打ちの症状の内容によっても異なりますが、認定される等級は12級13号または14級9号となるケースが多数です。
12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」
12級13号は、むち打ちなどの神経症状の中でも、画像所見と神経学的検査などによって症状を医学的に証明できるケースで認定されます。
たとえばレントゲンやMRI、CTなどで明らかに外傷性の異常がみられる場合、12級13号が認定される可能性があります。
14級9号「局部に神経症状を残すもの」
14級9号は、医学的には症状を立証できなくても被害者の訴える自覚症状に合致する症状が発生していると合理的に推認されるケースで認定されます。頸椎捻挫や外傷性頸部症候群と診断された場合でも、交通事故の内容や受傷時の状態、これまでの治療経過などの事情から実際にむち打ちの症状が出ていると考えられる場合、14級9号が認定される可能性があります。
むち打ちで認定される可能性の高い後遺障害等級としては12級と14級がありますが、これらの何が違うのか、みてみましょう。
根本的な違いは「症状を医学的に証明できるかどうか」です。
医学的に証明できれば12級が認定される可能性もありますが、証明できなければ14級または非該当にしなります。まったく医学的な説明ができなければ「非該当」になる可能性も低くはありません。非該当とは「後遺障害に該当しない」という意味です。そうなったら後遺障害慰謝料も逸失利益も支払われません。
むち打ちを医学的に証明するには基本的に「画像検査」及び「神経学的検査」によって異常な箇所を明らかにする必要があります。
まず、大切なのは、事故後すぐに、出来れば当日に整形外科を受診するということです。
仕事が忙しかったから2週間後に受診では厳しいです。
というのは、本当に痛ければすぐに病院に行くはずだ、というのが裁判所や保険会社の認識となっていることのです。
次に重要なのは、自己の身体に起きている痛みや痺れをしっかりと医師に伝えることです。
何となく言われるがままに、傷になっている箇所だけ治療し、首が痛いと伝えずに、数か月経ってから「やっぱり痛い」と言っても交通事故とは関係ないと言われてしまいます。
ここで注意したいのは、最近の整形外科であれば、パソコンでカルテを記入保存しているのですが、昔ながらの整形外科だと未だに手書きやハンコを押すだけでなっています。
そういった整形外科ですと、大して考えずに適当にカルテが作成されることがあり、早期に治療が打ち切りになってしまうことがあります。
しっかりとパソコン上のカルテに症状などを記入してくれる整形外科をおすすめします。
次に必要なのは、適切な時期に、適切な検査をすることです。
むち打ちの場合、まずはレントゲン撮影をするはずです。
それでも、痛みが治まらないときはMRI検査をすることになります。
画像としては以上ですが、痛みや神経症状の検査として、
- ジャクソン・テスト
- スパーリング・テスト
- 腱反射テスト
- 筋電図検査
- 徒手筋力検査
- 筋萎縮検査
- 知覚検査
- ラセーグ・テスト
- 握力検査
- 皮膚温検査
- ホフマンテスト
- バビンスキーテスト
- ワルテンベルグテスト
- トレムナーテスト
などを実施します。
以上をすべて実施する必要はありませんが、後遺障害申請をするのに、ジャクソンテストやスパーリングテストもしていないこともあります。
それでは、認定される後遺障害も認定されなくなってしまいます。
また、週2は整形外科に通院することが必要です。
交通事故でむち打ち症になると、週2以上は治療するはずというのが裁判所や保険会社の固定観念となっています。
注意したいのは、過剰診療です。
殆ど痛くない箇所を治療したり、治療していない箇所を治療していることにすると、その他正当な治療も疑われてしまいます。
整骨院・整骨院へのマークは厳しいため、何部位治療していることになっているのか注意が必要です。
最近の整形外科ならないのですが、昔ながらの整形外科に、すでに治療していないはずの箇所を治療していることになっていることもありました。
以上の行為は厳密言えば、詐欺に該当しますので、治療は必要な範囲のみにすべきです。
他には、症状は正確に主張し、一貫性をもたせた報告をすることが大切です。
最初に言えばよいということではなく、日々変わる症状をしっかりと伝え続ける必要があります。
また、痛い箇所がコロコロ変わっては疑われても仕方ありません。
それゆえ、担当医に症状を説明する際は、主張に一貫性をもたせ正確に話すことがなによりも大切です。
また、医療費で揉めないために下記のことに気を付けましょう。
整骨院・接骨院に通う場合は事前に医師の同意を得ておく
事故によるむちうちの治療で整骨院(接骨院)や鍼灸院などに通った場合、医師の指示・同意があるか否か等で、保険会社から治療費が払われるか決まることがあります。
医師の指示・同意を得て通院した場合:基本的に治療費を保険会社に払ってもらえる可能性が高くなります。
しかし、医師の方は通常許可をくらないため、もらえたら相当幸運といえます。
そして、保険会社は医療費支払いを早期に打ち切りたいと考えていることを頭に入れる必要があります。
保険会社としては、被害者の通院治療が長引けば長引くほど、多くの治療費や慰謝料を支払わなければならなくなります。
反対に通院治療が早く終われば、その分支払う金額を低く抑えることが可能です。
自賠責保険に請求できる120万円の範囲内で事件を終わらせたいのです。
そのため、「症状がもう安定したのではありませんか」「事故と関係なくわざと通院期間を延ばしていませんか」などと持ちかけ、医療費と慰謝料の支払いを早期に打ち切ろうと提案してくることがあります。
ここで、保険会社のいいなりになるのはやめましょう。
不正受給した保険金・医療費・慰謝料等の返還を求められる(保険金・医療費・慰謝料自体が支払われない可能性もある)
事故のむちうちの嘘が保険会社にバレた場合は、不正に保険会社から搾取した諸々のお金を返還する必要が生じます。
また、医療費を被害者が立て替え払いを行い最終的に保険金・慰謝料で精算するといった話で進めていた場合には、諸々の立て替え払い分の費用を保険会社に支払ってもらえなくなるケースもあります。
保険金詐欺として10年以下の懲役刑になる可能性がある:刑法第246条
保険会社は保険金詐欺には非常に厳しい対応を行うケースがほとんどです。(同様の模倣犯が増えないようにするため)
そのため、民事での解決とはならずに刑事事件として厳しい処罰がなされることになります。
刑法第246条
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
「結果として逮捕されて人生が台無しになる可能性大なので絶対に止めましょう。
弁護士に相談する
適切な検査を受け、一貫した主張をしても相手方の保険会社からむちうちを疑われる場合は、弁護士にも相談してみましょう。
交通事故問題に詳しい弁護士であれば、追加検査の必要性や診断書の記載内容を医師に助言してくれるので、適正な後遺障害等級に認定されやすくなります。
むちうちの症状が軽い場合、弁護士費用が慰謝料を上回る可能性もありますが、自動車保険に弁護士特約を付帯していれば、保険会社が弁護士費用を負担してくれます。
弁護士への相談料は10万円まで、報酬金などの弁護士費用は300万円まで保険会社が負担するので、獲得した慰謝料はそのまま手元に残せます。
弁護士に相談するときは、加入している自動車保険などに弁護士特約が付帯されているかどうか、契約内容を調べておくとよいでしょう。
まとめ
残念なことですが、軽い追突事故や衝突事故などによってむちうち症を受傷した被害者が、相手方の保険会社から嘘を訴えているとみなされる場合があります。
しかしながら、むちうち症は治療を長期化させようと思えばできてしまうという特性もあるため、そのような疑念を晴らすことは難しい場合もあります。
むちうち症に苦しんでいる被害者の方は、今後保険会社から疑いの目を向けられる可能性もありますが、ある程度ポイントを押さえれば、あらぬ疑いをかけられる可能性はグッと低くなります。
まずは専門家である弁護士に相談することをお勧めします。
是非当事務所の初回無料法律相談をご利用ください。
事案に即したアドバイスをさせていただきます。
運営者情報
-
当サイトでは、交通事故被害にまつわるお悩みに対して、弁護士の視点で解説をしています。また、当事務所にて携わった事案のポイントも定期的に更新しています。地元横須賀で「迅速な解決」を大切に代理人として事件の解決に向けて取り組んでいます。
初回相談は無料でお受けしておりますので、お悩みの方は、お一人で抱え込まず、ぜひ一度専門家にご相談ください。
弁護士紹介はこちら
最新の投稿
- 2024.10.28歩行者が交通事故被害に遭った場合の慰謝料はどうなる
- 2024.09.27交通事故で車椅子生活を強いられてしまったら
- 2024.09.27電動キックボードの交通事故
- 2024.05.22交通事故の過失割合はいつ決まるのか
横須賀での交通事故にお悩みの方は
今すぐご相談ください
-
提示された示談金が
低すぎる -
適切な後遺障害等級の
認定を受けたい -
保険会社の対応に
不満がある -
過失割合に
納得がいかない -
治療費の打ち切りを
宣告された -
どのように弁護士を選んだら
いいのか分からない -
追突事故
-
バイク事故
-
死亡事故