交通事故におけるびまん性軸索損傷における注意点
交通事故によりびまん性軸索損傷を患った場合、脳へのダメージへの大きさから、認知障
害、行動障害、人格変化など、脳に関する様々な症状が出てきます。
すぐに出る場合もあれば、一定期間を経て気づく場合もあります。
ここでは、そんなびまん性軸索損傷について説明していきます。
1 びまん性軸索損傷とは
びまん性軸索損傷とは、事故などの際に頭部に大きな衝撃が加わり、頭がい骨内で神経線
維である軸索が広範囲に渡って伸びたり切れたりするケガのことをいいます。
びまんとは、病気やけがの症状が広範囲に広がっている状態のことをいいます。
軸索とは、神経細胞の細胞体から伸びる長い突起のことで、神経細胞間の電気信号を伝え
る部分にあたります。
この軸索が強い外圧によって損傷することにより、脳内における情報の交換が上手くでき
なくなり、高次脳機能障害などの重篤な脳機能障害が生じます。
2 びまん性軸索損傷の症状
びまん性軸索損傷では、神経細胞間の情報を伝えるための部分へのダメージにより脳内に
おいて上手く情報を伝達できない状況が生じます。
そのため、外傷直後から意識障害が生じることが多く、仮に意識が回復したとしても、認
知障害、行動障害、人格変化、失行などといった様々な症状が生じます。
(1)日常生活への影響
① 認知障害
認知障害の症状としては、記憶・記憶力障害、注意・集中力障害、遂行機能障害などがあ
ります。
新しいことを覚えられない、気が散りやすい、行動を計画して実行することができない、
複数のことを同時に処理できないといった影響があります。
② 行動障害
びまん性軸索損傷の症状として、行動障害があげられます。
周囲の状況に合わせた適切な行動ができない、職場や会社のマナーやルールを守れない、
行動を抑制できない、危険を予測・察知して回避行動をすることができないといった影響
があります。
③ 人格変化
びまん性軸索損傷の症状として、人格変化があげられます。
日常生活への影響として、自発性や気力が低下したり、衝動的になったり、怒りっぽく、
自己中心的に物事を考えてしまったりします。
④ 失行
失行とは、運動機能に問題がないのに、正しい運動動作ができない状態のことをいいます。
日常生活への影響として、今まで生活で出来ていた動作ができなくなったりします。
3 びまん性軸索損傷の原因
びまん性軸索損傷は、頭部に対して強い外圧が加わることにより生じます。
頭部外傷時において、脳に回転性の外力が加わり、この回転速度により、神経細胞間を繋
げる軸索(が損傷することによって発生します。
4 びまん性軸索損傷の発見
びまん性軸索損傷の特徴として、脳内において、毛細血管の破裂が生じ、脳室内出血やク
モ膜下出血を伴うことが多いです。
脳の大脳皮質に明確な損傷は見当たらないため、事故直後の画像所見では発見されにくい
という問題があります。
そのため、びまん性軸索損傷においては、事故直後から定期的に、脳萎縮の有無を確認し
ていくことが重要となります。
MRI 検査や、より精度の高い SWI 検査を受診することが望まれます。
5 びまん性軸索損傷の後遺障害認定
びまん性軸索損傷で認定される可能性のある後遺障害等級としては、以下のものが考えら
れます。
別表第 1 の 1 級 1 号
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
別表第 1 の 2 級 1 号
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
別表第 2 の 3 級 3 号
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
別表第 2 の 5 級 2 号
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
別表第 2 の 7 級 4 号
神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
別表第 2 の 9 級 10 号
神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当程度に制限されるもの
びまん性軸索損傷の経過としては、大脳皮質に明確な損傷は見当たらず、受傷後しばらく
してから、脳室拡大や脳萎縮などの特徴が現れてきます。
したがって、びまん性軸索損傷において、後遺障害が認定されるためには、画像所見だけ
ではなく、医学的意見書や診断書等といった医療資料や、日常生活状況報告書や陳述書等
といった被害者側資料が重要となります。
びまん性軸索損傷で後遺障害が認定された場合の主な賠償項目としては、後遺障害が残っ
たことに対する後遺障害慰謝料、後遺障害が残らなければ将来得られるはずであった利益
すなわち逸失利益、将来の介護費用等の賠償金があげられます。
その中でも、後遺障害慰謝料と逸失利益については、高額化することが想定されるため、
安易に相手保険会社に言われるがままに示談することには注意が必要です。
6 びまん性軸索損傷の慰謝料
びまん性軸索損傷が認められたとして、高次脳機能障害の認定を受けた場合、後遺障害等
級と慰謝料額(弁護士基準)としては、以下のものがあげられます。
1 級 1 号 2800 万円
2 級 1 号 2370 万円
3 級 3 号 1990 万円
5 級 2 号 1400 万円
7 級 4 号 1000 万円
9 級 10 号 690 万円
びまん性軸索損傷については、画像所見での発見が難しいことから、後遺障害の認定が見
落とされる場合があります。
医師の方は、治療や今後の生活に力を貸してくれますが、正しい後遺障害認定については
わかっていないことがあります。一度交通事故を専門とする弁護士に相談することを検討
してください。
後からでは認められなくなる危険性があります。
7 びまん性軸索損傷で適切な賠償金を得るためのポイント
① 事故直後の意識障害
びまん性軸索損傷については、事故直後に意識障害や記憶障害を発症する場合が多く、自
賠責保険はほぼほぼその状態にない案件を後遺障害非該当とします。
意識についてどうだったかを、搬送先病院のカルテや救急車の出動記録や警察の捜査記録
で確認しましょう。
② 適切な治療・検査
交通事故や労災事故で怪我をした場合、適切な頻度で、適切な治療を受けることが重要と
であり、びまん性軸索損傷についても同じ事がいえます。
医師の判断を待たずに、治療を中断させてしまうことは、慰謝料の金額に大きく影響する
だけでなく、症状の悪化にもつながりかねません。
また、高次脳機能障害を扱う専門的な病院での診察、検査、リハビリが認定には必要です。
県内でもそのような病院は数えるほどしかありません。
そういった病院への転院を早く実現してください。
③ 弁護士基準の賠償金を受け取り
びまん性軸索損傷について、後遺障害認定を受けた場合、上での述べた通り、弁護士基準
であれば高額な慰謝料を受け取れます。
それだけの怪我を負ったのですから、当然の話です。
しかし、自賠責基準だとその金額は一気に下がってしまいます。
弁護士基準での賠償金を受け取るには、弁護士に依頼する他ありません。
理由は、相手保険会社が裁判となる可能性が高いから、裁判になった際用いる基準とする
のであって、一般の方が交通事故の裁判を提起、適切に遂行できるとは考えないからです。
例えば、大手企業の法務部に長年いて、分野によっては弁護士よりも法律に詳しいという
方でも採用しません。
そのような場合は、ご自身で訴訟提起する他ありません。
弁護士に依頼すれば、慰謝料以外も正しく受け取れる賠償金を計算してくれますし、相手
保険会社が無茶な主張をしていれば諫め、どうしても折り合いがつかなければ、訴訟を提
起、遂行してくれます。
ただし、このびまん性軸索損傷、高次脳機能障害は経験したことのない弁護士と、県権の
ある弁護士では大きく知識やノウハウに差があります。
弁護士選びの際は、びまん性軸索損傷及び高次脳機能障害の経験を最重要視してください。
必要な検査や治療、専門医の選定など、未経験や経験の浅い弁護士がそつなくこなすのは
難しい案件といえます。
以上、交通事故におけるびまん性軸索損傷について説明してきました。
その後の人生を一変させるような重体事故となります。
後悔だけはしないようにびまん性軸索損傷及び高次脳機能障害に精通する弁護士に相談し
ましょう。
是非当事務所の初回無料相談をご利用ください。
多くの案件を扱ったノウハウと経験から、解決まで適切なサポートをさせていただきます。
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初回相談は無料でお受けしておりますので、お悩みの方は、お一人で抱え込まず、ぜひ一度専門家にご相談ください。
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