交通事故の過失割合(ケース別)について

 交通事故においては、追突事故などを除き、事故の当事者双方に一定の責任が生じることが多いです。

過失割合とは、そういった事故の責任を割合で表したものであり、その割合によって賠償金の金額が変わってきます。

以下説明していきます。

 過失割合の決め方

過失割合は、「91」「82」のように表示され、数字の大きさで過失割合の大きさを表します。

過失割合は、当事者同士の話し合いによって決まります。

実際は、被害者側の保険会社と、加害者側の保険会社とで交渉を行い、過失割合を決めることが一般的です。

 

その際「別冊判例タイムズ38・民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」を利用して過失割合を決めていきます。

提示された過失割合に納得がいかない場合は、保険会社に過失割合の修正を求める交渉が必要となります。

そのためには、上記別冊判例タイムズを理解している必要がありますが、なかなか難しいといえます。

 

過失割合が決まるのは?

過失割合は、基本的には、示談をする場合に確定させますが、物損事故がある場合には、事故からしばらくして相手方保険会社から過失割合の提示がされるのが通常です。

過失割合にどうしても納得できず、示談合意に至らない場合は、裁判等で決めることになります。

 

被害者に過失があると「過失相殺」で賠償金が減額される

加害者、被害者それぞれの過失の割合に応じて、賠償金を減額することをいいます。

よって、被害者であったとしても、損害賠償金を加害者に対して全額請求できず、自身の過失分だけ賠償額が減額されることになります。

また、被害者に過失がある場合には、加害者の損害についても被害者が事故の過失分について負担しなければなりません。

 

なお、過失相殺による減額は、治療費や休業損害、慰謝料、車の修理費など、事故で被害者が受けたすべての損害を対象となります。

相談にいらっしゃる方で、自分のもらえる慰謝料が過失割合の分だけ減額されると考える方がいらっしゃいますが、減額されるのは、治療費や交通費などすべての損害となるため、最後に受け取る慰謝料が少額になることがあるので注意が必要です。

具体例を挙げると、

治療費50万円、通院交通費5万円、休業損害35万円、慰謝料60万円、過失割合が20対80のとき

総額150万円の損害から自身の過失割合20%を引いた120万円が賠償金となります。

 

治療費・交通費・休業損害は示談前に支払われることも多く、このケースでも事前に支払われていると90万円は支払い済みであるため、総額120万円との差額30万円のみの受け取りとなります。

慰謝料60万円の80%48万円ではないのか?と考える方がいらっしゃいますが、残念ながらそうはなりません。

 

過失割合は紛争化しやすい

過失割合は、損害賠償額に影響するため、示談交渉でもめる要因になりやすいです。

特に下記のようなケースは揉めやすいといえます。

 

損害額が大きい場合

当然ですが損害額が多ければ、それだけ過失割合で減額される金額も大きくなるので、なかなか妥協できません。

当事務所でも、後遺障害等級がついた事件では、安易に妥協せずに訴訟をしてもよいと考えています。

 

客観的な証拠が残っていない場合

最近ドライブレコーダーが普及し、問答無用で過失割合が決まるケースも増えていますが、ドライブレコーダーがない場合、言った言わない、あったことをないことに、ないことをあったことにするなどして過失割合で揉めることがあります。

 

駐車場内の事故

それほどスピードが出ていないため、ほぼ物損だけとなります。金額は少額でも、納得できないとして、紛争化しやすいです。

 

事故のパターン別で見る過失割合

具体的な過失割合を紹介していきます。

ただし、以下の割合は基本過失割合であるため、修正要素がある場合は、過失割合が変動する場合があります。

 

1 自動車同士の事故のケース

以下加害者をA、被害者をBとします。

 

  • 過失割合100の事故の例

Bが停車中、後ろからAに追突されたケース

Bが直進中、対向車線を走るAがセンターラインを越えてBに衝突したケース

・交差点で、青信号で直進中のBに、赤信号で進入してきたAが衝突したケース

 

  • 過失割合91の事故

・交差点で、優先道路を直進するBと、非優先道路から優先道路に進入したAが衝突したケース

・直進するBと、道路外に出ようと対向車線から右折したAが衝突したケース

・交差点で、赤信号で進入するAと、青信号で進入し、赤信号で右折したBが衝突したケース

 

  • 過失割合82の事故

・交差点で、青信号で直進するBと、対向車線から青信号で右折したAが衝突したケース

・信号機のない交差点で、直進するBと、対向車線から右折したAが衝突したケース

・信号機のない交差点で、直進するBと、一方通行違反で進入したAが衝突したケース

 

2 自動車とバイクの事故のケース

自動車とバイクのケースでは、自動車同士の事故に比べ、若干バイク側よりも自動車側に過失割害が厳しく認定されるケースがあります。

理由は、バイクが自動車のように固いボディに守られていないことにあります。

 

①過失割合100の事故

車同士の事故と、基本的には、同じケースとなります。

 

②過失割合91の事故

・交差点で、赤信号で進入したA車と、黄色信号で進入したバイクBが衝突

・信号機のない交差点で、非優先道路から優先道路に右折したA車と直進するバイクBが衝突

・信号機のない交差点で、直進するバイクBと、Bを追い抜き、左折した車Aが衝突

 

③過失割合82の事故

・信号機のない交差点で、広路を直進するバイクBと、狭路を同速度で直進する車Aが衝突したケース

・直進する車Aが進路変更をしたところ、後方から直進してきたバイクBと衝突したケース

・交差点で、赤信号で進入する車Aと、青信号で進入し、赤信号で右折したバイクBが衝突したケース

 

3 自動車と自転車の事故のケース

自転車は軽車両扱いされますが、歩行者と同視されるケースなど自動車同士の事故に比べ自転車側の過失が軽減されるケースがあります。

 

  • 過失割合100の事故

・自転車Bが直進中、対向車線を走る車Aがセンターラインを越えてBに衝突したケース

・交差点で、青信号で横断歩道を横断中の自転車Bと、赤信号で進入してきた車Aが衝突したケース

・信号機のない交差点で、直進する自転車Bに、後ろから追い越して左折した車Aが衝突したケース

 

  • 過失割合91の事故

・交差点で、黄色信号で直進する自転車Bと赤信号で直進する車Aが衝突したケース

・信号機のない交差点で、一時停止規制のない道路を直進する自転車Bと、一時停止規制のある道路を直進する車Aが衝突したケース

・信号機のない交差点で、広路を直進する自転車Bと、狭路を直進する車Aが衝突したケース

 

  • 過失割合82の事故

・交差点で、黄色信号で直進する自転車Bと、対向車線から黄色信号で進入し、右折した車Aが衝突したケース

・信号機のない交差点で、直進する自転車Bと、右折で進入する車Aが衝突したケース

信号機のない交差点で、優先道路から非優先道路に右折する自転車Bと、非優先道路を直進する車Aが衝突したケース

・自動車と歩行者の事故のケース

 

4 自動車と歩行者の事故の過失割合

日本では道路交通法上、基本的に歩行者優先となっており、自動車と歩行者の事故の場合、自動車側に重い過失が認められます。

 

  • 過失割合10対0の事故

・交差点で、青信号で横断歩道を渡る歩行者Bと、赤信号で進入する車Aが衝突したケース

・歩道を歩いていた歩行者Bと、歩道に突っ込んだ車Aが衝突したケース

・直進中の車Aと、車歩道の区別のない道路の右端を歩いていた歩行者Bが衝突したケース

 

  • 過失割合91の事故

・交差点で、赤信号で直進する車Aと、黄信号で横断歩道を横断する歩行者Bが衝突したケース

・交差点で、赤信号で直進する車Aと、赤信号で横断歩道を横断開始し、青信号に変わった歩行者Bが衝突したケース

 

  • 過失割合82の事故

・交差点で、赤信号で直進する車Aと、赤信号で横断歩道を渡る歩行者Bが衝突したケース

・横断歩道がない交差点またはその近辺で、直進する車Aと、道路を横断する歩行者Bが衝突したケース

 

過失割合を調整する修正要素

修正要素とは、基本過失割合を加算・減算する要素をいいます。

修正要素ごとに「-5」「+10」と修正幅が定められ、基本過失割合から加算・減算します。

別冊判例タイムズに事細かく規定されています。

 

修正要素の具体例としては

・事故発生時が夜間(日没から日の出までの時間)

・幹線道路

・歩車道の区別がない道路

・見とおしがきかない交差点

・住宅街や商店街

・幼児(6歳未満の者)

・児童(6歳以上13歳未満の者)

・高齢者(おおむね65歳以上の者)

・身体障害者(車いす利用者、視覚障害者、聴覚障害者など)

・わき見運転など著しい前方不注意

・著しいハンドル・ブレーキ操作不適切

・携帯電話を使用しながらの運転

・酒気帯び運転

・おおむね時速15Km以上30km未満の速度違反(高速道路を除く)

・酒酔い運転

・居眠り運転

・無免許運転

・おおむね時速30km以上の速度違反(高速道路を除く)

・過労、病気、薬物などの影響により、正常な運転ができないおそれがある場合

・直前直後横断

・佇立・後退

・急な飛び出し、ふらふら歩き

・大型車

 

などがあります。

基本過失割合に、以上の修正要素が含まれていることもあります。

具体的な修正の可否を知りたいときは弁護士に相談しましょう。

 

過失割合100を主張する場合の注意点

過失割合が100のように、被害者に過失がない事故の場合は、基本的に、自身の加入する任意保険会社の示談交渉サービスが使えないため、被害者自身で加害者側の保険会社と交渉する必要があります。

 

これは、「弁護士ではない者が、報酬目的で示談交渉をしてはならない」という法律が定められており、被害者に過失がない場合は、保険会社に保険金支払義務がないため、示談交渉を行えないことによります。

 

過失のない事故、または無過失を主張したい事故の場合は、弁護士に依頼することをおすすめします。

 

過失割合が90

当事者同士の話し合いにより、過失割合を「90」とすることを「片側賠償」(片賠)といいます。

片側賠償の場合、損害賠償金はどのように計算されるのでしょうか?

具体例を用いて確認してみましょう。

 

先ほどの治療費50万円、通院交通費5万円、休業損害35万円、慰謝料60万円のケースでは、

総額150万円から10%減額された135万円を受け取ることができます。

 

90対10であれば、相手の損害を10%支払う必要がありますが、90対0の場合、相手の損害を支払わなくてよいことになります。

 

過失割合の争い方

①証拠を集める

過失割合の交渉で重要なのは証拠です。事故状況を示す客観的な証拠があれば、有利に過失割合を主張することができます。

 

やはりドライブレコーダーの映像が決め手となります。

 

防犯カメラの映像も幸運にも事故現場にあるのであれば非常に有効です。

ただし、防犯カメラの映像は、警察にしか開示されないことが多く、カメラの設置に気が付いた場合は、速やかに警察に連絡し、映像の開示を依頼しましょう。

 

事故直後に撮影した事故現場や事故車両の写真も重要な証拠となります。

傷だけではなく、引いた画像や周辺の様子なども、動画に残すなどしておきましょう。

 

第三者の目撃証言も、重要な証拠となります。

事故現場に目撃者がいたならば、名前と連絡先を聞いておきましょう。

 

実況見分調書には、現場道路や運転車両の状況などが記載され、事故現場の写真も添付されるため、過失割合決定の重要な証拠となります。

公的機関が作成するため、裁判所は非常に重要視します。

まずは、事故証明書に記載された警察署に連絡し、指示された検察庁へ実況見分調書の謄写・閲覧の申請を行いましょう。

 

以上、交通事故の過失割合について説明してきました。

安易に過失割合を決めてしまうと、最終的に受け取れる賠償金が減額されてしまいます。

過失割合でお悩みのときは是非当事務所の初回無料相談をご利用ください。

交通事故を多数扱う弁護士ならではのアドバイスをさせていただきます。

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島武広島法律事務所 代表弁護士(神奈川県弁護士会所属)
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